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投稿日:2020年07月10日

事務局通信~伝えることの功罪

「都内に住む方が(新型コロナウィルスの)PCR検査の結果が出る前に○○県内に移動していたことが分かりました。その後陽性と判明し○○県内の医療機関に入院する予定」とのニュースが○○県のニュースで流れていました。○○県では以前も、県内への帰省中にPCR検査を受けた方が陽性判明の連絡を受けた後、東京の自宅に戻ったと報道され、それがきっかけでネット上で誹謗中傷を受ける事態となりました。
お二人の行動はあまり褒められたものではないかもしれません。「皆さん、ウィルスを周囲にうつすかもしれないと分かっていながら県域をまたいで移動するような不謹慎な人がいました」とも受け取れる正義感に満ちた報道は視聴者の受けがいいのかもしれません。しかし、行政やマスコミが結果的にバッシングを焚きつけるような形になりかねないのも確かです。

「このような行動はきわめて遺憾であります」などと県の首長がコメントすると、「このような不謹慎な人は皆で懲らしめてやりましょう」といったメッセージとして県民が受け取ってしまう可能性もあります(見せしめにすることで、県民が自発的に県の施策に従ってくれることを暗に期待しているということはないと思いますが…)。さらしものにしておいて、後から「差別や誹謗中傷はやめましょう」と付け加えるのは少し矛盾しているように思います。

差別や誹謗中傷がよくないと考えるのであれば、新型コロナウィルスの検査で陽性と判明した人をさらしものにするのはやめるべきでしょう。自分が非当事者である間は「もっと詳細な行動履歴や居住地・勤務先・家族構成などの情報を公開すべきだ」と考えている人も、いつかは当事者になる可能性があります。その時、世間のさらし者になって初めて「こんなことはおかしい」と思うのかもしれません。

宮城県では陽性と判明された方の濃厚接触者とされる方の一人が検査を拒否し連絡に応じなくなっているとの報道もありました。「プライバシーより命の方が大切だ」との論理で世間のさらしものにされるかもしれない、差別・誹謗中傷の対象になるかもしれないと考えた結果として、検査の拒否、行動履歴の黙秘、虚偽の申告をされる方は増えてくるでしょう。体調に異変を感じても、検査を受けたくないと考える人もいるかもしれません(重症化のリスクの高い方や、そのような方が身近にいる方は別として)。それは感染拡大の防止という観点からもマイナスになると思います。

ある県の首長が「東京に行くときは十分注意して行動してほしい」ともコメントしていました。これもまかり間違うと「感染してしまった人は注意が足りなかった人」という認識を促すことになり、感染された方が「私の不注意のために、皆にご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪を強いられるようになります。
確かにウィルスに感染しないように、感染させないようにある程度、気を付けて行動することは大切だと思いますが、ウィルスを肉眼で確認することができない以上、どんなに気を付けていても感染するときは感染します。毎日満員電車で通勤しているのに感染しない人もいれば、自宅に閉じこもっていたのに感染する人もいます。
ゼロリスクは存在しません。「気を付けていれば感染しない」のではなく、「気を付けていれば感染のリスクをある程度軽減できる」ということにすぎません。

また、時限的にベーシックインカムを導入するといった経済保障政策が財政的に難しい現状においては、最低限のリスクは受け入れた上で社会経済教育活動を営んでいかなければ、(すでに経済的に十分な保障がある「守られている人」は別として)私たちは生きていけません。「注意しろ」ということが、「生きるのをやめろ」ということと同義になってしまっては、「命を大切にする」ということとも矛盾してしまいます。

法を犯したわけでもないのに、検査で陽性と判明してしまったために、世間にさらされ、差別・誹謗中傷を受け、謝罪まで求められるような社会の在り方をどう考えていくのか。私たちはそのような社会を望んでいるのか。新型コロナウィルスの流行によって、突きつけられた課題だと思います。

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特定非営利活動法人(NPO法人)太陽と緑の会