最新情報 11月6日

リサイクル日記28

価格破壊が進むとゴミが増える

 太陽と緑の会では毎月1回、徳島市のご好意により、引き取り手のない放置自転車を頂いており、これをハンディを持ったメンバーとスタッフとの共働作業によりリサイクルしていきます。
 放置自転車とは自転車放置禁止区域(徳島駅近辺など)に駐輪していたため徳島市により撤去された自転車のことです。6ヶ月間は徳島市が保管し、その期間中に持ち主が引き取りに来なかった場合は、払い下げの対象となり、それを太陽と緑の会と自転車組合さんとで頂いています。
 「放置自転車を頂く」と言うと「それはええ商売やなぁ」と言われる方もおられますが、程度のよいものはほとんど持ち主が引き取っていきます(当然と言えば当然の話ですが)ので、払い下げの対象となるもののほとんどは、傷み、サビがひどく、故障個所も多く、オーバーホール同然の整備が必要なものも少なくありません。自転車を修理に出した経験のある方であれば、いかに修理・整備にコストがかかるかご存知だと思います。
 徳島市の職員の方のお話によると、以前は撤去した放置自転車の8割くらいは持ち主が現れ、徳島市に保管手数料を払って引き取っていたのが、最近はそれが7割をきるようになってきたそうです。
 盗難にあって遠方で乗り捨てられていたというようなケースでは持ち主も自分の自転車がどこにあるか分かりにくい、といった要素もあります。はっきりとしたデータがあるわけではありませんが、太陽と緑の会を利用して下さる一般市民の方からは「自転車をまた盗られた」という話を聞くことが多く、確かに自転車の盗難は増えているようです。
 しかし、引き取りに来る人が減った原因は、むしろ自転車が「使い捨て商品」になってきた、ということにあるようです。自転車も価格破壊が進み、1台1万円をきるような商品も珍しくなくなりました。これだけ価格を安く出来るのは、確かに中国などで部品を製造することにより人件費コストが安くなった、という部分もありますが、部品の質を落とし、部品点数を減らして材料コストを削減していることも無視できません。
 その結果、「安かろう悪かろう」の自転車が大量に市場に出回るようになりました。ひどいものだと、新品で買ったのに1年もたない、というものもあります。ベアリングの数が減らされているため、ベアリングのガタが早く来たり、スポークが機械締め(人件費削減の一環)のため、すぐに折れたり(折れたらタイヤごと交換するしかなく、何千円もかかります)、タイヤもすぐ亀裂が入ったりします。
 「どう盗られるんだからいいものでなくてもいい。安物でいいんだ」という面もあるのかもしれませんが、自転車のライフサイクル(使用期間)が短くなるので、ゴミとして出される自転車は増えます。太陽と緑の会にも一般市民の方からの自転車回収依頼が増えてきました。
 安物の自転車は、実はリサイクルが難しいのです。使い捨てを前提に設計されているため、部品の交換や調整などがやりにくい(もしくはできない)構造になっているからです。自転車そのものが欠陥品同然であることもあり、その場合はいくら整備をしてもどうにもなりません。
 リサイクル自転車の価格は、整備コストではなく、新品で売られている価格を基準につけるため、安物の中古自転車は整備に手間がかかった割には安い値段しかつけられない、ということになります。2万円相当の整備・修理をしたのに4千円でしか売れない、ということです。
 しかし、この自転車をゴミとして捨てるとお金がかかります。払い下げ対象となっている放置自転車の中にはこうした安物の自転車が大量に含まれています。なぜなら、高価な自転車は持ち主が引き取りに来るからです。安いからこそ引き取りに来ないのです。安物の自転車であっても、ちょっとでもリサイクルの可能性のあるものはなるべく頂いてくるようにしていますが、それでも毎月かなりの台数が残ります。
 徳島市ではこれらの自転車を1台につき250円の処分費用を払って処分しているそうです。これは撤去コスト(自転車放置禁止区域に止めてあるものをトラックに積んで保管場所まで運搬するまでの人件費、燃料費及びトラックの維持費)を含んでいません。これらはすべて徳島市民の納める税金で賄われています。
 価格破壊は、物が安くなって一見よいことのように思えます。しかし、価格が下がるかわりに品質も落ちてしまうのでは、ゴミを増やすばかりです。ゴミ処理の部分まで含めて考えれば、全体的にはむしろコストが増えています。このコストを払うのは納税している市民であり、将来環境汚染の影響を受ける私達の子孫です。