最新情報 10月23日

リサイクル日記・その26

 食堂で食器の値段つけをしていると、自宅からの通所メンバーのAさんがすーっと横に寄ってきて、ぼそりとつぶやいた。
「B学園(社会福祉法人運営の知的障害者法定入所施設)の人達は2回も旅行行くんやな」
 Aさんはちょっぴりうらやましそうでもある。 
 B学園からは現在、ハンディを持ったメンバー3人が実習生として日曜・祝日を除く毎日、バスと汽車を乗り継ぎ、片道2時間近くかけて通所している。B学園では、毎年実習に行っているメンバー(入所者、園生)数人と職員2名程度で1泊2日の旅行に行く。実習生だけが対象となるのには理由がある。
「でもね、B学園の人達は、自分の給料を自分で自由に使うことができないんよ。Aさんは自分の給料は自分で使えるやろ」
「うん」
「B学園の人達は、給料袋をそのまま学園の先生に渡さなければいかんのや。その中からお小遣いとして、1日当たり100円とか200円とか渡されているんや。この旅行はこの給料を積み立てて、それで行くんやで。」
「………」
「Aさんも給料、誰かに預ってもらうで?」
 そう聞くとAさんは2、3歩進んで、大きな声で
「嫌や。それは絶対にイヤや。自分で使える方がええ。」と言いました。

 隣の芝生は青く見えるのかもしれません。表面的な部分だけ見てうらやましく思ってしまう、ということは多々あります。
 Aさんだけではありません。住居・水光熱・食費の現物支給を受けている他に現金で月6万7000円もらっているメンバーのCさんでさえ、「2回も旅行に行く」と聞くとうらやましく思ってしまう現実があります。この6万7000円は自分の好きなように使える「6万7000円」です。「すしが食べたい」と思った時には、財布の中身と相談しながらすしを食べる自由があるのです。しかし、この「自由」は障害者福祉の世界では決して当たり前のことではありません。