最新情報 9月16日

認定NPO法人制度について

 「認定NPO法人制度」とは、一定の要件を満たし国税庁長官の認定を受けたNPO法人に対して行った寄付を寄付金控除等の対象とする税制上の特例措置です。つまり「認定NPO法人」に寄付をすると、税金の控除を受けることができます。平成13年10月1日より施行されます。
 制度の詳しい内容については、シーズ(市民活動を支える制度を作る会)、日本NPOセンター、国税庁などのホームページをご参照下さい。ここでは太陽と緑の会との関連で話を進めていきたいと思います。

1 「認定NPO法人」になると寄付が増える?

 「認定NPO法人」となると寄付をした個人・法人は納税時に寄付金の控除を受けられるので、寄付が増えることが期待されます。といっても、この不況の折、税金が控除されるからと言って、それほど寄付が増えるとも思えません。リストラにあって自分達の生活を支えるだけで精一杯の方もたくさんおられます。企業の場合はなおさらで、寄付金控除は黒字の法人にこそ意味があるのであって、赤字法人が大半を占める今日、この制度によって寄付が飛躍的に増えるとは考えにくいです。
 一般市民サイドからすれば、行政以外に非営利団体という新たな選択肢ができることを意味します。つまりこれまで行政に税金として納めていたお金の一部を非営利団体に寄付することができる、ということです。ある部分では行政と非営利団体とがいろいろな側面から比較されるようになり、「ここは行政に任せた方がいいが、ここはむしろ民間非営利団体に委ねた方が効率的でかつ住民のニーズにも応えられる」といった議論がなされるようになってきます。
 今日、何でもお上(行政)任せにするやり方は、住民のニーズに追いつかない上、財政的にも限界をきたしており、「行政の仕事の範囲」の見直しが必要となってきています。その意味ではこの「認定NPO法人制度」は大変画期的なものです。
 ただし、これは「認定NPO法人制度」が本当に機能すれば、の話です。実はこの制度には多くの問題点があります。



2 寄付金が総収入の3分の1以上必要
 
 「認定NPO法人」となるためには様々な要件がありますが、最も重要なものは「総収入金額等に占める受入寄附金総額等の割合について」です。平成13年8月31日現在、NPO法人は4759法人ありますが、この要件を満たすことのできる法人は非常に少ないと考えられます。
 具体的には「総収入金額等に占める受入寄附金総額等の割合が3分の1以上なくてはならない」というものです。この基準には細かい規定がたくさんついているので、大変分かりにくいものとなっています。
 ポイントは、次に挙げるもののうち、総収入金額から@及びAを、受入寄附金総額からA及びBを除いて計算する、ということです。
@国・地方公共団体からの補助金・助成金等
A年間3000円未満の寄附金
B一者からの寄附金のうち寄附金総額の2%を越す部分
 


3 この要件を満たすのはかなり困難

 例えば年間の総収入が1000万円のNPO法人を考えてみます。国から100万円、民間の助成団体から50万円、個人・法人からの寄付が計200万円(うち年間3000円未満の小口の寄付が計20万円、年間10万円の大口の寄付が2件で計20万円)、会費収入が90万円、自主事業等による収入が350万円、残り210万円はその他の収入であったとします。
 まず第一に、国からの100万円は@の規定により除外されます。第二に、民間助成団体からの50万円のうち、寄附金総額250万円(一般寄付及び民間助成)の2%(5万円)を超える部分、つまり45万円はBの規定により除外されます。第三に、一般の寄付のうち、年間3000円未満の小口の寄付(計20万円)はAの規定により除外、年間10万円の大口の寄付はBの規定により、各5万円ずつ計10万円が除外されます。
 この結果、この基準で言う総収入金額は、1000−100−20=880万円、受入寄附金総額は、250−45−20−10=175万円、「総収入金額等に占める受入寄附金総額等の割合」は19.9%となり、3分の1、つまり33.3%には遠く及びません。
 太陽と緑の会の場合、平成12年度決算にこの基準を当てはめますと、わずか0.9%となります。
 

4 寄附金頼みの運営は非現実的

シーズが平成12年に行ったNPO法人の実態調査報告(有効回答法人数346)によれば、総収入に占める個人・法人からの寄附金の割合は平均で20.8%、補助金・助成金(民間助成含む)は15.5%となっています。これは上記のような「年間3000円未満の寄附金は除外する」「一者からの寄附金のうち寄附金総額の2%を越す部分は除外する」といった計算をする前の数字です。
 寄附金に依存した運営というのはかなりリスクがあります。何の見返りもない一般寄付というものは決して安定した収入にはなりえず、景気の動向に左右されがちな側面もあり、このような不安定なものに依存すれば、運営や活動そのものが不安定になります。
 そこで多くのNPO法人は、自主事業を行ったり、業務委託を受けたりすると同時に、会員を募集して会費を頂くことで運営費を捻出していきます。補助金・助成金などによるサポートも受けます。さらに寄付を募ることで何とか運営が成り立っている、というのが実情ではないでしょうか。
 「総収入金額等に占める受入寄附金総額等の割合が3分の1以上なくてはならない」という認定要件は、このようなNPO法人の運営状況を無視したものと言わざるをえません。



5 行政と民間非営利団体とのすみ分け

 営利を目的とした民間企業にはなじまない、との理由で、様々な「非営利活動」を行政が担って来ました。しかし「非営利事業」の中には、行政に任せた方がよいものと、民間の非営利団体に委ねた方がいいものとがあります。
 例えば、阪神淡路大震災の被災者の支援活動では、民間のボランティア団体が機動的に動きましたが、あのような活動は行政には難しいことかもしれません。「行政は公平性を要求される。目の前で支援を必要としている人から順々に支援をしていくと、本当に支援を必要としている人が後回しになってしまう可能性もあり、それは公平性を欠く」という意見もあります(もっとも、行政職員の中に「本当に支援を必要としている人」を見分けるだけの力量のある方が何人いるのか、といった問題もありますが)。
 そもそも、民間の非営利活動が広がってきたのは、行政が住民のニーズに応えることができない部分があるからです。行政を変えようとするよりは、行政の仕事の範囲をできるだけ小さくし、民間の非営利団体に委譲していくべきではないかと思います。
 ただ、その民間非営利団体が行政の出先機関になってしまっては、ただ組織を変えただけで中身は変わらないことになってしまいますので、情報公開による一般市民のチェックが必要です。情報を公開し、風通しをよくすることで、組織の腐敗を防ぎ、非効率性を排除することができます。
 民間非営利団体の活動の場が広がる、ということは、一般市民が主役になる、ということです。自分達で決定し、その結果については自分達で責任を取る、という社会になる、ということです。お上(行政)にすべてお任せにして、何かあったら責任を取ってもらう、という時代と決別するわけです。
 実際は、何か起こっても行政は責任を取ろうとはしません。これまでの歴史をひもとけば明らかです。いざとなったら行政が何とかしてくれる、ということが幻想であることに、私達は気付く必要があります。