最新情報 RSS
 全 90 件中 [31-45件目]
2023/12/07お米寄贈しました
2023/12/03香川から見学
2023/12/02年内の活動は12/26火曜日まで
2023/12/01太陽と緑の会からの助成 第59回(from 1993)
2023/11/30冬の感謝セール開催します
2023/11/24事務局通信~値段は交渉で決める?
2023/11/21宿泊研修2023大阪兵庫 報告
2023/11/12徳島県職員地域交流体験研修(第13回)
2023/10/31家電リサイクル料金
2023/10/20白川学園に行ってきました
2023/10/08おミカン頂きました
2023/10/08定休日・冬期休業のお知らせ
2023/10/06秋の感謝セール
2023/10/05お米頂きました
2023/10/02事務局通信~秋の訪れ
投稿日:2021年08月19日

事務局通信~ロックダウン法制化検討の話の前に

 政府と厚生労働省のコロナ禍の対応で問題だったのは、「ワクチンの開発・承認・確保」「医療提供体制の整備」という難問を後回しにして、安易と思われた「人流抑制」に頼り過ぎたことにあります。
 確かに欧米では「ロックダウン」という強力な人流抑制を行ってきました。しかし、早い段階からワクチンの準備も進め、アメリカは12月14日にはワクチン接種を開始し、わずか1か月で1000万回の接種を行いました。日本は2月17日から医療従事者を対象とした接種を始めましたが2か月たってもわずか192万回しか接種できず、その頃アメリカではすでに国民の5人に1人が接種を完了していました。
(ちなみに、コロナ感染症対策分科会会長の尾身氏が理事長を務める国立病院機構・地域医療機能推進機構(JCHO)の病院は、「医療従事者向け先行接種」の実施医療機関に選定され、最初にワクチン接種を受けています)
ワクチンの承認・確保に大きく出遅れるという失態により、オリンピックに間に合わないことは確定的となったにもかかわらず、3月から国内での製造が始まっていたアストラゼネカ製ワクチンや、すでに治験が始まっていた国産ワクチンの緊急使用という切り札を使うことなく、ひたすら「人流抑制」に固執しました。

 また、新型コロナウィルス医療の負担が限られた病院と医療従事者に集中しているという、日本特有の問題に対して、政府も厚生労働省もなかなか本腰を入れて取り組まず、コロナ禍が始まって1年半という猶予期間があったにも関わらず、十分な病床や治療体制が用意されない状態で東京オリンピックを迎えました。
 新型コロナ感染症対策分科会会長の尾身氏も、「人流抑制」に関しては事あるごとに警鐘を鳴らし「2週間、5割削減をお願いします」といった強いメッセージを発したりしてきましたが、「ワクチン」や「医療提供体制」の問題についてはそこまで積極的に発言してはいません。尾身氏のコメントだけ聞いていると「新型コロナ人流抑制対策検討分科会」といった印象すら与えかねないものがありました。
(昨年の段階で、ワクチンの緊急承認・接種体制の準備や(野戦型病院建設なども含めた)具体的な医療提供体制の整備について、分科会でもっとしっかり議論し、それを政府や国民に向けて提言されていれば、もう少し状況は変わっていたかもしれません。もっとも「人流抑制」偏重の姿勢は尾身氏に限ったことではなく、専門家と言われる皆様の中にも相当数おられます。)

 新型コロナウィルス対策で優先すべきことは、命を落とされる方をできるだけ少なくするということです。それは直接的に新型コロナウィルスで亡くなられる方だけでなく、人流抑制政策によって命を落とすことを余儀なくされる方も含まれます。そのために最初に考えることは、いかに早くワクチン接種を進めていくか、ということです。なぜなら、「人流抑制」を永遠に続けることは不可能であり、そのようなことをすれば生活基盤の崩壊によって命を失われる方が続出するからです。ワクチン接種によって発症・重症化を抑制し、命を落とされる方をできるだけ少なくしていく。これが感染症対策の一丁目一番地です。
 ただ残念ながらワクチンの開発には時間がかかるため、それまでの間、感染が拡大し医療がひっ迫するという事態を防ぐ必要があります。そのための両輪が、新型コロナの医療提供体制を改善し十分な受け皿を準備していくことと、新型コロナの入院治療を必要とする人の増加をできるだけ抑え受け皿のキャパを超えないようにすることです。
 「人流抑制」とは、ワクチン接種の早期開始と医療の受け皿拡大に総力で取り組んでいる間、やむを得ず必要とされる一時しのぎの策にすぎません。にもかかわらず、日本の政府は「人流抑制」を最優先課題とし、前面に出し過ぎたため、その効力が薄れてしまいました。要請というお願いでダメならば、強制力を伴うロックダウンで、という発想なのかもしれませんが、国民の半分以上がワクチン接種を完了した国でロックダウンを終了し経済活動の再開に舵を切る世界の流れの中で、1か月以内にワクチン接種完了率がアメリカを追い越すことが確実な日本でロックダウンの必要性が問われる、というのも滑稽な話だと思います。
 ワクチンや医療体制の問題は短期間で改善するのは無理だ、という声もありますが、そうであるならば、なぜ無理なのか、何が問題なのか、どうすれば改善できるのか、という、2009年の新型インフルエンザ感染拡大の時にきちんと議論すべきだったのに先送りにして蓋をしてきた難問に、政府が自民党最大の支援団体でもある日本医師会を交えて真剣に取り組む必要があると思います。それをやりたくないから、手っ取り早く国民に我慢を強いる、というのでは筋が通りません。
 政府に強い権力を持たせることを期待する空気感があるときは、より一層の慎重さが求められます。なぜ太平洋戦争を止められなかったのか。軍部だけを悪者にして水に流せるような問題ではありません。表面的な都合の良いところだけ、欧米で行っているから日本でも、という発想は、大日本帝国の過ちを繰り返すだけです。

※アストラゼネカ製ワクチンについては、7月末にようやく公的接種での使用が決まり、緊急事態宣言が発出されている自治体で、接種の予約受付が始まっています。大阪市では15万回分の配分を受けて集団接種を行う予定で、1週間分、3,780人分の予約受け付けが8月16日に始まり、翌日の正午時点でほぼ予約が埋まりました。愛知県、埼玉県、栃木県、茨城県、京都府でも接種のスケジュールが決定・公開されるなど、準備が進んでいます。選択肢のひとつとして、遅くとも6月末までに用意しておけば、40代、50代の重症患者の増加という第5波の状況も多少は異なるものとなっていたかもしれません。
 ただ、沖縄県の玉城デニー知事は、47都道府県で人口当たり陽性判明者数が最も多く、ワクチン接種が最も遅れているにも関わらず「需要がない」として、わずか100回分のみの申請しかしませんでした。全国知事会の新型コロナウイルス緊急対策本部会議では「緊急事態宣言が発出されているなど、流行地域である都道府県の市町村に対し、優先的に、希望量を早急に供給することを国に強く働き掛けてほしい」と訴えていたのに、いざ優先的に配分されることが決まったら「(アストラゼネカ製なら)いらない」と言うのでは、知事として本気でコロナ禍に立ち向かう覚悟があるのか、医療のひっ迫という事態に対して危機感を持って対応しているのか、疑問に思われても仕方がありません。「ロックダウン相当」「セルフロックダウンを」といった強いメッセージを発しても「人流抑制」への効果は限定的で、一刻も早いワクチン接種以外に医療ひっ迫を解消する道はありません。


8月26日追記

 新型コロナに関する医療提供体制の問題がようやく俎上に上がるようになってきました。
 田村厚生労働大臣は、自治体が公表している確保病床数よりも実際の入院者数が少ないとして、病床を確保した医療機関に支払われる補助金が適切に使われているか、東京都などと実態調査を行う考えを示した、とのことです。また、東京都以外の都道府県でも、必要に応じ、調査する考えを示しました。
 東京都では新型コロナウィルス病床として5967床を確保しており使用率は約7割です。政府は新たに病床を確保した医療機関を対象に1床あたり最大で1950万円を補助しているとのことですが、補助金を受給しているのに新型コロナウィルス患者の受け入れ要請を断っているケースが存在する可能性を視野に入れた調査と考えられます。
 さらに、厚生労働省は、改正感染症法に基づき、東京都とともに、都内約650の病院、約1万3500の診療所等に病床確保や人材派遣を要請しました。同法による国の要請は初めてです。「看護師が足りない」「コロナ患者の動線確保が難しい」といった理由は要請を断る「正当な理由」として認められるため、どの程度の実効性があるかは分かりませんが、「医療ひっ迫の解消には人流抑制しかない」という、「人流抑制」偏重であることの批判をかわす狙いもあるのかもしれません。

 同法に基づく病床確保の要請は、今年の4月に奈良県が全国で初めて行いました。当時新型コロナ病床376床のうち366床を14の公立・公的病院が提供する一方で民間病院はわずか2病院10床という状況でした。8月に入ってからは静岡県、大阪府、茨城県も要請を行っています。
 日本は病院の約71%、病床数の約57%を個人及び民間医療機関(医療法人)が占める(令和元年・厚労省医療施設調査)、という民間中心の医療体制で、人口当たり病床数及び平均在院日数が先進国の中でもトップクラス、という特徴を持っています。個人及び民間医療機関に対し、新型コロナ病床数増加の指示を出す権限は政府にも都道府県知事にもありません。
 これらの医療機関に対し強い影響力を持つ日本医師会が、率先してそのような呼びかけを行って下されば状況も違ってくるのかもしれませんが、日本医師会の中川会長は「感染拡大を防止し、苦しむ人を1人でも減らすため、いま一度、危機感と緊張感を全国で共有する必要がある。去年4月の最初の緊急事態宣言のように、街から人がいなくなる状態を再現する必要があり、東京パラリンピックの開催中であっても、全国一律の発令が必要だ」と発言されており、「人流抑制」を第一に考える当初からのスタンスが変わることはなさそうです。
 「街から人がいなくなる状態」になることで失われる人生についてどのように考えておられるのかは定かでありませんが、第4波の最中に会長ご自身が参議院議員の政治資金パーティを主催された、という「危機感と緊張感」を共有しているとは言い難い行動は、わずか4か月で「時効」にされたようです。

>>トップへ戻る
特定非営利活動法人(NPO法人)太陽と緑の会