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投稿日:2020年11月02日

事務局通信~世間の風

電話のコール音が食堂に響く。
メンバーのAさんが出る。
「はい、太陽と緑の会リサイクル作業所メンバーのAです」

ご家庭で不用となったお品物の引取(回収)のご依頼、リユース品の在庫の問い合わせ、など、様々なお電話を、毎日100件近く頂きます。
太陽と緑の会リサイクル作業所では、その最初の窓口を、様々なハンディを持ったメンバーたちが引き受けています。
「今日活動していますか」といった即答可能なお問い合わせは別として、具体的な内容のお返事はこちらから折り返しのお電話で対応させて頂いております。
例えば、回収にお伺いする日時については、回収担当スタッフが決めており、日中はトラックで外に出ていることが多いため、夕方に担当スタッフがご連絡させて頂くような形になります。

「はい、それではお名前とお電話番号をお願いします」
メンバーのAさんは何回かその言葉を繰り返した後、困った顔でスタッフのBさんの所まで来て「ちょっと代わって」と受話器を渡しました。
「申し訳ございません。私は回収の担当者ではないので、お伺いする日時については分からないので、お名前とお電話番号をお聞きして、夕方こちらからお電話させて頂くような形になります」
Bさんが平身低頭、お客様とお話させて頂いて、何とか納得して頂きました。

「品物の引取の依頼の電話をして日時がすぐに決まらんなんて、ほんな商売しとったらあかんわ」
「3コール以内に電話を取るというビジネスマナーが、福祉施設でも常識や。障がい者が電話を取るなんて時代の流れに逆行しとるんちゃうん?」
いろいろな方からお叱りの言葉も頂いてきました。
営利目的の商売としてリサイクルビジネスを行うのであれば、様々なハンディを持ったメンバーは最初から切り捨てる(受け入れない)、あるいは公的資金がもらえる期間だけ受け入れて邪魔にならない程度の雑用に従事させる、という方がはるかに合理的です。膨大な労力・精神力を費やし、失敗やミスの後始末を身を削りながら引き受け、10年20年という長いスパンでメンバーを活かし育てることを考える、という営みは、損得勘定で見ればとても割に合うものではありません。

Aさんは脳性まひで言語障害があります。20年間、リサイクル作業所でいろいろな種類の作業に取り組んできましたが、なかなかAさんを活かすことにつながるものがなく、最終的に電話と昼食づくりの作業が残りました。
受話器越しに聞くAさんの言葉は聞き取りづらいと感じる方も少なくないと思います。
「お前では話にならんから話の分かる奴を出せ」
「ちゃんとした人間はおらんのんか」
「まともに話せる人に変わってくれ」
お客様の言葉のひとつひとつがAさんに突き刺さります。
「障がい者だからってバカにして…」
Aさんが涙を流します。
言われたら辛い。しかしそれが世間の現実です。ハンディを理解してくれる、ハンディを持った人に気長に接してくれる、そのような人は世間の中でほんの一握りです。
身近にハンディを持つ人がいない(いたとしても気付きにくい)社会の中で、ハンディを持つ人と接するのは初めて、という方がほとんどであり、戸惑うのが当たり前です。

新型コロナウィルスの流行で会社が倒産したり、仕事を失ったり、給料が減ったり、学校が休校になって仕事を休まざるを得なくなったり、それぞれが大変な中で生きています。
「障がい者は大変かもしれへんけど、うちらも生活していくんに必死や」
「大変なんは障がい者だけと違うんちゃうん」

塀で囲って世間の風から守ってあげれば辛い思いをしないで済みます。障がい者のことを理解してくれる人だけに囲まれて心穏やかに生きていく。世の中の大多数の人は理解も支援もしないという現実にさらされることなく生きていく。それもひとつの生き方です。
その代わり、一生塀の外では生きていけないかもしれない。塀の外にユートピアは存在せず、世間の風から逃れることはできない。世間で生きていく力は、世間の風に当たるという実践を通じて身につくものであり、トレーニングや訓練だけでは歯が立ちません。
親が健在のうちは親が守ってくれるかもしれない。しかし親亡き後は誰が守ってくれるのでしょう。「自分が死ぬ1日前にこの子が死んでくれたら」と親が願う現実は、それほど昔の話ではありません。
「社会が変わる必要がある」という正論もありますが、社会とか世間と言っても、突き詰めれば私たち一人一人の価値観や行動様式であり、それが変わっていくためには数十年、時には数百年という長い年月が必要となってくることでしょう。

もちろんハンディゆえに、100%の世間の風は強すぎて耐えられないかもしれない。半分くらい囲いが必要となるときがあるのも確かです。そのために作業所があり、スタッフがいます。

「(視覚障害を持つもう一人の電話担当)メンバーのCさんはスラスラと話せるから、電話で話をしているお客さんの方もCさんがハンディがあるとは思わない。だからこの人に聞いたら何でも答えてくれると思っていろいろ聞いてくる。Cさんも、障がい者だからってバカにされたくない、って気持ちが強いから、『私では分かりません』と言えずに分からないことでも一生懸命答えようとする。しまいには、自分では決められないことなのに『たぶん○○だと思います』と勝手に言ってしまって、後でかえってお客様を怒らせてしまうこともある。そんなCさんも、30数年前、電話の担当を始めた頃は吃音が激しくて、受話器を取ってから2分くらい言葉に詰まって何も言えず、お客さんからよく怒られた…」
スタッフDのそんな話を聞きながら、少しずつバランスを取り戻していくメンバーのAさんがいました。
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特定非営利活動法人(NPO法人)太陽と緑の会