投稿日:2014年07月26日

事務局通信65

事務局通信65〜「病棟転換型居住系施設」
 精神保健福祉法が改正され、医療・介護総合推進法も成立し、厚生労働省にて「病棟転換型居住系施設」の検討が始まろうとしています。
 これは「精神病院の病棟の一部を改修して住まいにする」というものです。介護精神型施設、宿泊型自立訓練、グループホーム、アパート等への転換が提案されています(「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」の策定検討委員会)。
 病院の中にある建物を「地域」とし、患者さんがそこへ移ると退院とみなされ精神病床数が減少する仕組みです。施設の運営財源は消費税増税分が充てられる可能性があります。

 我が国の精神病床数は34万2194。人口1000人当たり2.684(平成24年・厚労省調査)。都道府県別では、西日本が多く、上位9県は九州四国です。(鹿児島、長崎、宮崎、佐賀、徳島(5.062)、熊本、高知、大分、福岡の順。以下10位山口、11位沖縄、14位愛媛、15位香川)国際的に見ると、OECD34か国中1位です。(日本の後は、ベルギー1.79 オランダ1.39 ドイツ1.15 チェコ1.03と続き、34か国の平均は約0.7(2009年)(OECD Health Data 2012))。

「今後10年のうちに、受入れ条件が整えば退院可能な約7万2000人(社会的入院)の退院・社会復帰を目指す」と社会保障審議会の報告書にて明記されたのが平成14年。2年後「精神保健福祉施策の改革ビジョン」でも、厚労省の施策の方向性として示されました。9年後、精神病床の入院患者数は2万7500人減って、29万3400人となっています。

 社会的入院の中には、反社会的・非社会的行動やその他の問題で家族がフォローしきれなくなった知的障害の方が、障がい者の入所施設に入れず、精神病院に入院するケースも依然としてあります。30年、40年、亡くなるまで入院されている方もいれば、3か月、半年くらいで退院し、しばらくして、別の病院に入院し、病院を転々とする方もいます。
 認知症・アルツハイマーの方の精神病床への入院数は15年間で1.9倍に増えました。制度の谷間にあって、精神病院以外に選択の余地がない、いわば「入院予備軍」の方の存在も看過できません。
 かつて先進国で精神病院が減って行く中で、日本だけ精神病床が増え続けてきました。病床の9割は民間病院です。
 なぜそうなったのか。改めて問い直す時なのかもしれません。(文責・小山)