投稿日:2014年04月24日

事務局通信64

事務局通信64〜理念的ベースの継承

ある番組で、できることは自分でやってもらう「引き算の介護」というデイサービスの実践が紹介されていました。
現場を経験している方であればイメージしやすいかもしれませんが、「本人にできるかもしれないことも、できないと決めつけて、すべて支援者(介助者)がやってしまう」スタイルの方が、支援者にとっては楽です。
できることを自分でやってもらうためには、事故や失敗など様々なリスクが生じますし、あれこれ考えないといけないし、手間や時間もかかります。
また、運営的な面でも、できることが増えると要介護度が下がり、収入が減ってしまうという矛盾が生じます。
その意味ではとても興味深い活動だと思いました。ただ、代表の方が「この取り組みを全国に広めたい」と言われていたこと、全国3か所に拠点を持っている他、5か所でフランチャイズ展開も行っていることは、少し気になりました。
いわゆる「ノウハウを伝える」といったことが、福祉領域でどれだけ可能なのか、若輩者の私にはまだ分かりません。ただ、この60代の代表の方が人生を賭けて培ってこられた「理念と実践」が、別個の人格を持った人にきちんと伝わるには、長い年月が必要なように思います。短期間の研修を行っても、形だけの真似、知識としての理解に終わってしまうかもしれません。
サービスのマニュアル化、標準化が今のトレンドですが、まったく同じようにやったとしても、同じ結果が出るとは限りません。福祉領域では、人間同士の相互作用によって結果が出る、いわば自分自身の生き様や人間としての総合力が試されるからです。
背中を見ながら、時間をかけて、理念的なベースを受け継ぎつつ、それぞれがオリジナルなものを模索していく。もし「全国に広まる」可能性があるとしたら、そのようなイメージでしょうか。言うは易し、行うは難し、ですが…。