投稿日:2012年12月15日

事務局通信56

事務局通信〜障がい者の「格差」問題

 知的ハンディを持つAさんは、一戸建ての家に共働きの両親と暮らしている。6畳の個室には自分専用の机、テレビ、パソコンなどが置いてある。毎日原付で作業所に通所する。昼食は母が毎日弁当を用意してくれる。「今日も冷凍食品です」とAさんは言うが、きちんと栄養のバランスを考えたメニューになっている。給料は母が本人名義の口座に貯金してくれており、テレビ、原付など必要なものはこの貯金を下ろして買っている。
 障害の程度も年齢もAさんと同じくらいであるBさんは、間取り3Kの公営住宅に両親と兄弟の6人で暮らす。一家の収入は、日給月給の仕事につく父の収入と、Bさんの作業所での給料のみ。Bさんは布団1枚ひくと畳が見えなくなる部屋に弟と2人で寝起きしている。
 昼食は「昼食代がかかると家計が苦しくなるから」と本人の希望で弁当を持参していたが、弁当箱を開けると8−9割が白ごはんでソーセージ1本とレタス2枚、といった具合が2年続いた。体がだるいと言って休むことも多かった。
 Bさんが20才になって障害基礎年金がもらえるようになり、1年半、本人やご両親と話し合った結果、ようやく作業所で注文している給食のおかず弁当を昼食に食べるようになり、夏バテもしなくなった。今は作業所での給料で昼食代、生活費、小遣いを賄っている。

 障がいの程度を表す表現として「重度」「軽度」という言い方がある。一般的には「重度」の方の方が「軽度」の方よりも支援の必要性が高いと思われがちだが、必ずしもそうではない。
 障がい者の方の置かれている状況は様々である。父もしくは母がいない方、母と血がつながっていない方、両親は別居しており自分は祖父母と暮らしている方、学齢前から施設に預けられきた方、健常者に負けないようにと幼少時から「頑張って」きた方、逆に家事は一切やらずに育ってきた方。衣食住や「仕事」に関する考え方も幅がある。
 福祉施設の運営的な側面だけを考えた場合、行政からもらうお金が同じであれば、家庭環境がしっかりしていて成育歴にも特に問題のない人の方がよい、ということになる。
また保護者の方も、わが子を福祉施設に入れるならば、多額の公的資金や財団からの助成を受け、冷暖房完備の立派な建物と送迎バスがあり「専門性が高い」とされている有資格者の指導員がいる施設の方が魅力的に見えるかもしれない。
 その結果、公的資金が多く投入されている施設に、比較的支援の必要性の低い人が集まり、より多くの支援を必要としている人がその分はじき出されていく、という現象が生じることもある。(小山)

(事例は当会の活動内容をイメージして頂くために、日常の取り組みを紡いだものであり、ある特定の事例を指すものではありません。)