投稿日:2012年04月29日

事務局通信49

事務局通信49〜年の功〜
 スタッフのAがメンバーのCさんのことでぼやいている。
「何でスタッフBの言うことは聞くのに、私の言うことは聞いてくれないのでしょうか」
「スタッフBに頼まれるとサッとやってくれるのに、私が頼むと文句ばかり言うんです」
「やっぱり、なめられているんでしょうか」

 言葉は、単に言葉だけが届くわけではない。特に言語的な理解が難しい状況であればあるほど、話し手の全人格、価値観、生き様といったバックボーンにまで、アンテナが伸びてくる。同じことを同じように言われても、感じ方は違う。Bさんに言われたら納得するけれど、Aさんに言われたら「あんたには言われたないわ」と腹が立つ、ということもある。理屈や因果関係で説明しにくい領域である。

 ボランティアのMさんは10時から15時まで来て下さっている。Mさんは、今から27年前、太陽と緑の会リサイクル作業所が入田町月の宮の旧豚舎で活動を始めた頃の、「何もなかった」大変な時期を支えて下さった。定年退職されて、今は、当会の様々なハンディを持ったメンバーと一緒に作業をして下さっている。
 メンバーのDさんは3年前養護学校を卒業して作業所に通い始めた頃、いつもMさんに甘えるようにへばりついて作業をしていた。段ボールの積み方、整理整頓の仕方など、Mさんから学んだことは多い。「DさんにとってMさんは、お師匠さんやなぁ」と言うと「知らんわ」と照れ臭そうに笑う。
 この4月から来るようになった若手新人メンバーのEさんも、Mさんを慕っている。「一番やさしく教えてくれるのはMさんです」。
 仏壇会社の工場長をされていたMさんは、穏やかで物腰もやわらかいが、仕事に対しては厳しい人だ。仕事の段取りから、細かい整理整頓まで、きちっとされる。メンバーに対してもそれほど甘いわけではなく、間違ったことに対しては注意もする。しかし、メンバーの受け取り方が違う。
 もちろん、ボランティアというポジションによる所も大きいのだが、それだけではない。

「やっぱり年の功と違うか」とスタッフF。「私はこれからどうしたらいいのですか。私も年をとったら、そうなれるんでしょうか。教えて下さい」とスタッフA。
「年を重ねればええって訳でもないし…。年を重ねんと分からんこともあるし…」
「相手に変わってほしいと思っているうちは、うまくいかんのとちゃうやろか」
スタッフFの苦悩は続きます。