投稿日:2011年04月16日

事務局通信40

 ある精神科病院では、国民健康保険等及び自立支援医療制度を使うと、7200円のデイケア利用料(午前9時〜午後3時)が720円、デイケア利用時の昼食代500円が50円になります。差額は保険料と税金で負担しています。
 自立支援医療制度では、所得水準によって本人負担額に上限設定があります。
 例えば、統合失調症の方の場合、市町村民税非課税世帯で本人収入が年間80万円以内ならば月額2500円。市町村民税課税世帯で、所得割額が3万3000円未満であれば、月額5000円が上限です。それ以上は払わなくてよいということです
 先ほどのデイケアを給食付で利用すると、1回につき770円かかります。3回の利用で2310円。上限が2500円ならば4回目は190円、5回目からは何回使ってもタダということです。
 上限2500円の方が月に15日利用すれば、年間121万7400円が保険料と税金で賄われることになります。
費用の心配をせずにデイケアが利用しやすくなり、再入院の予防に寄与する、という意味では本人にとってプラスと言えます。入院に比べれば、社会的コストも少なくなります。
 しかし、「何回使ってもタダ」に伴うコスト感覚の麻痺は、特定のサービスへの過度な依存を誘発すると同時に、費用対効果の検証が不十分となる可能性もあります。
地域共同作業所等に通っている当事者の方が、昼食だけその病院の給食を利用すると500円かかります。週5日食べれば1カ月で1万円を超えます。それを節約するために、近所のスーパーで安いお惣菜や特売品を探したり、自炊に挑戦したりすることもあります。しかし考えてみれば、そのようなことは、私たち庶民の暮らしでは当たり前のことです。
 「タダで昼食がもらえる」という制度は、様々なハンディを持った人から、当たり前の暮らしの営みを奪ってしまう可能性があります。
 様々なハンディを持った人にできるだけノーマルに近い生活を保障していくことがノーマライゼーションの理念であるならば、広い意味での「働く場」と、ノーマルに近い生活を営むために必要な所得を保証した上で、サービスの対価は払って頂く、という施策も必要かもしれません。
 対価の支払は、それに見合うサービスを求めることにもなり、サービス水準の向上につながります。7200円のサービスを提供できているかどうか、という意識を持つことは大切なことだと思います。