投稿日:2010年12月07日

事務局通信38 働くこと

事務局通信 働くこと

 太陽と緑の会月の宮共同生活棟で生活しているメンバーのAさんはもうすぐ61才を迎えます。太陽と緑の会に来て26年、視覚障害(弱視と視野狭窄)がありますが等級が軽いため、障害基礎年金は受給できません。健常者と同じように、国民年金を還暦まで納め、国民健康保険も払っています。
生活棟の生活費は、太陽と緑の会リサイクル作業所で働いて得られる給料で支払っています。
作業所では主に電話番を担当していますが、できることは限られています。例えば、品物の引き取りのご依頼があったときはお名前とお電話番号をお聞きするだけです。それでも、たまに電話番号の聞き間違いがあります。「私では分かりませんので」の一言が言えずに思考停止状態に陥り、保留ボタンを押したままウロウロすることもあります。お客様に怒られ、スタッフがお詫びする毎日です。
月の宮共同生活棟は公的資金が1円も入っておりません(通常のグループホームでは1人当たり年間90万円程度、入所施設であれば1人当たり年間340万円の公的資金が投入)。炊事、洗濯、掃除等の家事は、世話人さんがするのではなく、生活の当事者である3障害(身体、知的、精神)のメンバー4名が分担して行っています。 
自分のできることは自分でやる。できないことはメンバー同士助け合う。それでも難しいことは職員やボランティアの助けを借りる。世話人に頼らない分、生活費も安くできる。市民の皆様のご協力も頂き、働いた給料で生活費を支払える。
Aさんの場合、年間120万円程度の生活保護費を支給する、家事等については福祉サービスで対応する(障害程度区分の問題で利用できない可能性もありますが)というのが通常の社会福祉です。
裏を返せば、Aさんの営みはそれだけ税金を節約していることになります。国民年金、国民健康保険をきちんと納付して、財政にも貢献しています。
多様な働き方を認めることで、なるべくお金のかからない、費用対効果の高い社会になる。その人なりに立っていくことの模索は、本人にとっても社会にとってもプラスである。
財政難の今を乗り切るカギはそこにあるように思います。