投稿日:2010年06月05日

事務局通信 その33

事務局通信 その33〜3人で支える〜
太陽と緑の会リサイクル作業所の電話番は、20年以上メンバーのAさんが担当してきましたが、中堅メンバーへのバトンタッチを始めました。
Aさんには視覚障害があります。しかし障害の等級が軽いため、障害者年金が受給できない上、国民年金を納めなければなりませんでした。
いろいろあっても、生きていくためには働いてお金を稼がなければならない。手先を使う仕事も、力仕事もなかなかうまくいかない中で、Aさんに最後に残された仕事が電話番でした。
そのAさんもこの1月で還暦を迎え、衰えが随所に見受けられるようになってきました。
老齢年金の案内が届きました。
「まだ、もらわんでもいける」とAさん。
老齢年金は60才から受給すると3割減額され、それが一生続きます。「働けるうちは働いていきたい」そんなAさんの想いが伝わってきました。
しかし、電話対応で必要とされる水準が年々上がっていく中で、Aさんが電話番を続けることが難しくなってきました。
Aさんはあくまで電話番であり、Aさんにできることは、品物引き取りを希望される方の住所氏名電話番号と品物の内容を聞いてカードに記入することと、営業日・営業時間など簡単な問い合わせに応えることくらいです。それ以外は専任職員でないと対応ができないため、職員に取り次ぐか、ご連絡先をお聞きして、折り返しこちらからお電話させて頂く、という形になります。
「そんなことやっても、面倒くさい上に団体としての信用もなくすからやめた方がいい」といろいろな方から言われます。確かに電話番も兼ねた事務職員を雇う方が、ずっと楽で、太陽と緑の会の印象も良くなるでしょう。
しかし、その結果、メンバーは不要な存在となります。この流れが他のすべての作業にも広がっていくと、一部の限られた人を除き、様々なハンディを持ったメンバーの居場所はなくなってしまいます。
社会からはじかれてしまった人たちの行き場所を作ったはずなのに、そこからもはじかれてしまう、ということは、実際によくある話です。最終的には税金でフォローすることとなり、はじけばはじくほど、将来の消費税増税という形ではね返ってきます。
Aさんの問題は、自分では返答できないことを聞かれたときに、「私では分かりません」となかなか言えないことにあります。分からないことでも一生懸命答えようとする、というと、良いことのように思えますが、実際は逆です。
推測に基づくあいまいなことを言って誤解を与えたり、返答に詰まって無言の状態が続いたり、お客様に同じ話を何度もさせてしまうことになったりして、お叱りを受けることになります。
Aさんからバトンを受けるメンバーBさんは34才。言語障害を持ちダミ声でゆっくりと話すBさんは、午前中だけ電話番を任されるようになりました。実はBさんも障害者年金がありません。午後はAさんとメンバーCさんの二人三脚で電話番を引き受けることになりました。
Aさん一人では限界に来ていた電話番を、3人のメンバーで何とかつないでいこう。Aさんが細く長く続けていくための、新たな挑戦が始まりました。