投稿日:2008年09月02日

事務局通信22 自分の足で立つこと

 8月5日、「メンバー特別賞」の選考会を行いました。これは様々なハンディを持ったメンバーから見て「よく頑張っているな」と思うメンバーを投票で選び、表彰するものです。
 このミーティングのポイントは、「メンバーだけで選ぶ」ということです。スタッフに投票権はありません。メンバーだけで選んで大丈夫なの、という声もありましたが、メンバーの選択に賭けてみることにしました。
 投票用紙は事前に配り、記入してもらいました。16年目のベテランメンバーの藤田さんが司会となり、開票作業が始まりました。メンバー一同が緊張した面持ちで見つめる中、藤田さんが1枚ずつ名前を読み上げ、ホワイトボードに記入していきます。結果Aさん7票、Bさん4票、Cさん、Dさん、Eさん1票ずつという結果になり、Aさんが特別賞の3000円を獲得しました。Aさんは昨夏の特別賞では決選投票に敗れ、涙を飲んだこともあって、今回の受賞を本当に喜んでおり、自宅に帰ってからも興奮が収まらなかったようです。
 Bさんは残念ながら2位に終わってしまったのですが、メンバーに一人一人に聞いてみると、いろいろな意見が出てきました。「(Aさんの半分の票数だから)半分の金額(1500円)を出してあげてもいいのでは」「1500円はちょっと多いけど1000円だったら出してもいい」「500円ならいい」「いや負けたのだから出す必要はない」
 結局、話し合いの結果、中間を取って1000円を準特別賞として出すことになりました。2位となってがっかりしていたBさんは、思いもよらぬ展開に思わずガッツポーズが飛び出しました。
 実はBさんは、この2年間なかなか通ってくることができず、来るとしても午後の3時、4時になってしまう、という状況が続いていました。それが7月に入り、通所日数が増えただけでなく、午前中から来ることができるようになりました。そうしたBさんの変化を他のメンバーもきちんと見ていたわけで、メンバーの底力というものを改めて感じました。
 Bさんはその後意欲的になり、朝早くから来る日が増えたので作業時間も増えました。給料日の午後5時半、Bさんは事務室に入り、不安と期待の入り混じった表情で給料を受け取り、給料明細書の金額を確認しました。「もし心配だったら、ここで中身を開けてくれてもいいよ」と私。袋を開けるBさん。中身を見て笑顔になりました。お札を何回も何回も数え、「こんなに入っているとは思いませんでした」とうれしそうに事務室を後にしました。
 頑張ったことを周囲が認めてくれることによる自信、誰かに恵んでもらうのではなく自分で働いて得たお金、Bさんは自立につながる2つのものを手に入れました。
 「人間ってすごいな」と思う瞬間があります。それは「この仕事をやっていてよかった」と思える瞬間なのかもしれません。